私は人生で2つのアケゲーに長期的に取り組んだことがある。

片方は以前からこのブログでも話題にしている音ゲー、特にIIDXだ。1 IIDXに関しては、一時期は心中する勢いでやっていた。 周りには同じような練習量で私より効率よく成果を出す人もいたし、今回詳しくは語らないが、当時現実に差し迫っていた問題から逃避し時間を注ぎ続けたため、まさに「心中」だった。 その甲斐あって、そこにたどり着くまでに少なくない人が挫折すると思われるというところまでは行ったと思う。 とはいえ、後に逃避していた問題が爆発し精神的にまいってしまい音ゲーからも離れてしまったため、心中とはならなかった。

もう片方は、以前から私を知っている人であればご存知かもしれないが、今回はネガティブな話が多くなるので伏せておき、以後Aと呼ぶことにする。 こちらに関しては期間だけで言えば4年くらい続けていた気がするが、IIDXと違って成し遂げたことはこれと言って無く、泣かず飛ばずといった感じだった。

とはいえ、一時期はAでもランカーのプレイ配信を見るなど上達のためにもがいていた。 だが、その中でふと「この人たちはこのゲームがサービス終了したらどう生きていくのだろう?」、ひいては「私は今このゲームにコミットしていいのだろうか?」と考えてしまった。 熱心なランカーの追っかけをやっていたわけではないので実際のところは知らないが、ランカー層には25〜35歳程度と思われる人が多かったように思われ、ゲームの外の現実について悩みを零す者も実際に何人か見られた。 私もAをやっていたのは20代後半だったので(なれるかは別として)「これが理想の人生なのか」と悩んでしまった。 そもそも、私はAについてはどうにも上達が遅く、ランカーですらそのようなことを考えてしまうのだから、結果を出せないまま時間を溶かしたときの後悔など推して知るべしだ。

少なくとも日本では一般的に仕事で35歳程度までにある程度の技術、経験を積まないと、その後大きくハネることは難しい。 経験を積んでいればその後もキャリアアップや収入アップを目指していくことはできると思われるが、もしその頃になって新卒に毛が生えた程度の収入だったら…。

すべての幸せが金で得られるわけではないが、金で得られる幸せ、避けることができる不幸はたくさんあるし、金だけでは得られないチャンスをものにするにも結局金が必要なこともある。 25〜35歳をゲームと心中する勢いでのめり込んで過ごすというのは、その後の人生の選択肢を大きく狭めることは否めないだろう。

とはいえ、そのような人がいたとしても私はその行いを是とすることはできないまでも馬鹿だとも思わない。 何かに打ち込み成果を出した経験は、自分の中で少なからずかけがえのないものに醸成されていく。

先に書いたように私も人生の諸々の問題全てをかなぐり捨てて音ゲーに取り組んでいたため、その後一度全てを失ったと言っていいほど悲惨な状況に陥った。 ただ、確かにその時プログラミングの学習などより有益なことに時間を注いでいれば今より良い状況にいることができたかもしれないとたまに考えることがあるが、実際今過去に戻れたとしてそうしたいかと言われると、それも悩む。 私がその後ある程度人生を持ち直すことができたから、あるいは今の自分を完全に見捨ててしまうのが嫌だからそう考えているのはあるかもしれないが、心からそう思うのだ。 だから、私は人生の重要な時期に心中と言える勢いでゲームに打ち込むことは合理的ではないかもしれないが、愚かだとか惨めだとは考えない。

だが、私は結局ゲームと心中することはできなかった。 音ゲーと心中しかけて全てを失った私の手元に1つだけ残ったものがあった。 すみっコぐらしだ。 何の冗談かと思うかもしれないが、私はこの数年間「私が死んだらこれまで迎えたすみっコが恐らく全て処分されてしまう可能性が高いので死ぬわけにはいかない」という気持ちで希死念慮を跳ね除けてきたし、すみっコを迎え続け、いずれはちゃんと飾ってやれるほどの家に住むために収入を上げることを目指してきた。 もし人生が行き詰まってこれまで迎えたすみっコを手放すことを考えたりすると身が引き裂かれるほど悲しくなってしまうので、形は歪だが背負うものができてしまい自分一人の都合でちゃらんぽらんに生きることができなくなってしまったのだ。23 当然、先細りの人生になるような選択ではなく、なるべく可能性を残し続ける選択をしなければならなくなった。 これも一種の「心中」なのかもしれないが、今のところはうまく機能している。

先に書いたように、ゲームと心中することを私は否定はしない。 ただ、結果としては、音ゲーに続けてAと心中しなくてよかったと思う。 音ゲーと心中しかけた時に思ったことだが、見えている問題から目を背け続けていると自己肯定感が終わってくるし、だんだん正気ではいられなくなっていく。 Aの界隈ではそれまでいた界隈よりも人間同士のいざこざを多く目にしたが、少なからずそれが影響しているのではないかと思う。 それでも覚悟ができているのであれば心中するのもまたいいが、「このゲームを続けた先、人生はどうなってしまうのだろう?」と悩むのであれば、一度立ち止まって考えるべきというのが私の今の考えだ。


  1. 正確には音ゲーはpop’n musicから入門ししばらくは並行してやっていたのだが、IIDXよりだいぶ前にやめてしまった。 ↩︎

  2. それでもやがて死はやってくるのでそのとき迎えたすみっコをどうするか考えておく必要があるのだが、それはまだ答えが出ていない。 ↩︎

  3. それでも真っ当に家庭を持っている人に比べればだいぶ好き勝手やってる自覚はある。 ↩︎